宅建試験を受ける受験生にとって、「権利関係」は大きな山場の一つといえるでしょう。
大多数の受験生が苦手とする科目ですから、できれば効率的に勉強したいですよね。
そこで今回は、「権利関係」とは何か、出題傾向から勉強する優先順位について解説します!
「権利関係」とは?
宅建試験で問われる「権利関係」とは、民法・借地借家法・区分所有法・不動産登記法の4つからなる、私法上の権利関係を問う分野です。
「私法」とは、個人と個人の関係を規律する法律を指し、民法や商法などがこれに当たります。他方、「公法」とは、国と国民の関係を規律する法律を指し、憲法や刑法などがこれに当たります。
民法
民法は、私たちが日常生活を送るうえで欠かせない重要な法律です。
個人や法人などの「私人」の行動を規律しているため、日常生活のあらゆる経済活動が民法に基づいているといっても過言ではありません。
そのため、民法が規律している範囲はかなり広く、一通り勉強するには多くの時間を要してしまいます。
ですが、宅建士はアパートやマンションの売買、賃貸借の契約を行っているので、
宅建試験でも、こういった不動産に関連する民法の規律がよく問われています。
そこで、深入りしない程度に全体像をつかみ、重点的に勉強すべき部分を絞って学習することが必要な科目となっています。
借地借家法
借地借家法は、借地権(土地の賃貸借関係)や借家権(建物の賃貸借関係)、およびその更新などについて規律する民法の特別法です。
「特別法」とは、特定の人や場所、行為などに限定して規律される法律を指します。
他方、「一般法」とは、あらゆる事項について広く規律する法律を指し、民法はこれに当たります。
民法という「一般法」を幹に、枝分かれしたのが「特別法」というイメージです。
民法の規律だけでは、借主の立場が貸主に対して弱くなってしまうため、「借主の保護」を目的として作られました。
民法に比べて条文数は圧倒的に少ないですが、土地や建物の賃貸借関係についてより詳しく規律しているので、民法の規定と比較しながら学習しましょう。
また、借地と借家は似たような規定が多いので、こちらも比較すると理解しやすいです。
区分所有法
区分所有法は、主に分譲マンションが普及したことで作られた法律です。
分譲マンションでは、住居部分は区分所有者が所有しますが、それ以外の敷地や廊下などの共用部分については、各区分所有者ら相互間で権利関係を調整しなければなりません。
複数の区分所有者で分譲マンションを共有しているので、各部屋や共用部分の管理方法などについて全体で統一した意思決定が必要であるということですね。
不動産登記法
不動産登記法は、土地や建物を誰が所有しているのかを明確にし、「権利の保全」と「取引の安全」を保護するために作られた法律です。
- どのような場合に登記申請する必要があるのか
- どんな人が登記申請しなければならないのか
- 登記簿にはどのような事項が記載されているのか
などについて定めた法律となっています。
「権利関係」の問題数と目標点
「権利関係」の問題数は全14問です。
分野別の問題数と目標点は以下の通り。
分野 | 問題数 | 目標点 |
---|---|---|
民法 | 10問 | 6~7点 |
借地借家法 | 2問 | 1~2点 |
区分所有法 | 1問 | 1点 |
不動産登記法 | 1問 | 0~1点 |
合計 | 14問 | 8~9点 |
宅建試験は全50問あり、そのうち「権利関係」が14問を占めています。
例年、合格点は35~38点となるので、ここでどれだけ点数を採れるかが非常に重要となってきます。

合格するために、避けては通れない科目です!
「権利関係」の出題傾向と優先順位
「権利関係」が難しいとされているのは、学習範囲が広いことも挙げられますが、特に以下の傾向が挙げられることにあります。
- 出題形式の多様性
- 問題文が長い
- 内容が複雑でなにが問われているのか分かりにくい
出題形式の多様性
「権利関係」の問題は、とにかくバリエーションが豊かです。
以下のように、多様な出題形式で問われます。
問題文が長い
「権利関係」の問題は、問題文が長くなりがちです。
その理由は、各法律・各条文が特定の場面を想定して作られているためであり、
出題するときも特定のシーンに限定しないと、求める答えが出てこないので仕方がないのです。
内容が複雑でなにが問われているのか分かりにくい
加えて、問題文が長くなると内容も複雑になり、問われていることが分からなくなりやすいです。
特に登場人物が多い事例問題では、各人物ごとに権利関係が異なってくるため、ただ漠然と問題文を読んだだけでは、「じゃあ結局なにが問題なんだ?」と質問の内容を理解できないかもしれません。
事実関係を図に描いて整理すると、理解しやすくなるのでおすすめです。
民法
民法は、「権利関係」全14問のうち10問と、約7割を占める分野です。
全体でみても2割を占めているので、貴重な得点源として捨てることができません。
出題数が多く学習範囲も広い民法ですが、過去の出題傾向から、意外と偏りがあることがわかります。
出題者にとって作りやすい分野・カテゴリーがあるんですね。
- 制限行為能力者
- 意思表示
- 代理
- 時効
- 不動産物権変動
- 抵当権
- 債務不履行と解除
- 賃貸借
- 相続
上記9つの分野が解けるようになると、点数が安定してくるので、
民法の全体像をざっくり掴んだら、これらを重点的に勉強することをおすすめします。
借地借家法
借地借家法は、毎年「借地」から1問、「借家」から1問出題されています。
基本的な定義や条文の理解、具体的な事例を考えるなど、民法と同様に様々な出題形式に対応できる勉強が求められています。
また、「借地」分野・「借家」分野のそれぞれが問われるので、こちらも満遍なく勉強しなければなりません。
とはいえ、借地借家法は「借主を保護する」という目的で作られた法律なので、常に「借主にとって有利になるのか?」を念頭において勉強すると理解しやすいかと思います。
加えて、「借地」分野の方が「借家」分野よりもシンプルなので、まずは「借地」から始めることをおすすめします。
区分所有法
区分所有法は、毎年1問出題されます。
先に挙げたように、この法律はマンションに関する管理方法などを定めた法律です。
そのため、住民同士で定めた共用部分の管理方法などを記載した「規約」と、住民たちが集まって話し合い、統一の意思決定を行う「集会」がよく出題されています。
もっとも毎年1問しか出題されないので、割り切った勉強を心がけ、過去問で出題された部分を中心に勉強することをおすすめします。
不動産登記法
不動産登記法は、毎年1問出題されています。
出題傾向から見るに、この法律の対策は正直かなり難しいです。
基本的なことを問うこともあれば、細かい知識を問うこともあり、年によって正答率がマチマチになっている分野です。
この法律でも、区分所有法と同様に、割り切った勉強が求められますね。
正答率の高い過去問(=基本的なことを問う問題)を中心に勉強することをおすすめします。
まとめ
以上、「権利関係」とは何か、出題傾向から勉強する優先順位についてまとめてきました!
宅建試験を合格するためには、「権利関係」の攻略は必然です。
ですが、なかなか理解できない上、どこから手をつければいいのかわからない科目でもありますよね。
こういうときは、過去の出題傾向を分析することが肝要で、頻出の分野を起点に勉強の計画を立てていくのが効率的です。
この記事では、民法で頻出の9分野を筆頭に、どこから勉強すべきかの優先順位を記載しました。
また、当サイトでは、宅建試験にむけて各科目の解説記事を順次投稿していきます。
これらを参考にして、ぜひ「権利関係」を攻略していきましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。